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スタッフブログ

サポかな
掲載日:2023年3月 1日

「サポかな」取材名言~見過ごされた子どもの虐待 ゼロを目指す AiCAN 髙岡昂太氏

 さまざまな社会課題を解決するビジネスプランが多数寄せられた「かながわビジネスオーディション2023」。県知事賞を獲得したのは、株式会社AiCAN[川崎市]の「データ利活用で職員の意思決定を支援する児童虐待対応支援サービス」だ。アナログツールが中心となっている児童相談所へタブレットアプリを提供し、データ収集→解析・フィードバック→業務改善サポートというPDCAを回しながら、多忙でセンシティブな児童虐待対応を支援する取り組み。代表の髙岡氏は、臨床心理士として、児童相談所や医療機関・司法機関などで虐待や性暴力に対する臨床に15年以上携わってきた「現場の人」であり、また、産総研人工知能研究センターで、子どもの虐待や発達障害、社会的孤立などの社会課題解決に取り組んできた研究者でもある。
増え続ける虐待相談、人手不足の中、的確な判断が求められる現場で子どもの虐待死をどうしたらなくせるだろう…?と考えた先に、「ICTとデータの利活用」があった。
「すべての子どもたちが安全な世界に変える」という髙岡氏の言葉をご紹介する。
       (取材日2月1日) ―本日発行の「サポかな」3月号、ぜひご覧ください。

ひっ迫する現場では、「たぶん大丈夫だろう」という人間の認知バイアスがかかりやすい

まず、自治体の児童相談所や子育て支援課・母子保健課など子ども虐待対応の最前線は危機的な状況に陥っている、という認識が私たちに必要だろう。増え続ける虐待件数にマンパワーが追いつかず、髙岡氏によれば、「単純な件数の増加だけでなく、DVなどさまざまな要因により対応が複雑化している上、発達支援など子育て相談ニーズも増大・多様化している」。命に係わる現場で、高度な専門性が求められる職員たちの業務負担は深刻化。離職者が後を絶たないという。

情報提供)AiCAN

そんな現状を踏まえ、フロー図(↓)の上段をご覧いただきたい。
現場では、限られた情報をもとに、職員の経験や感覚により主観的な判断がされがちとなっている。また、手書きの文書やFAX中心のやりとりであることや、家庭訪問時など移動中のタイムラグによって、情報の解釈を含めた「行き違い」が起こる可能性も。若手職員には経験豊富なスーパーバイザーの指導が欠かせないが、ベテラン層の職員が不足しタイムリーに必要な助言を受けられるとは限らない現状も、ひっ迫感を加速させている。

「そもそも人間は、判断に迷うと『大丈夫だろう』という正常性バイアスが働く性質を持っています。そして虐待死亡事例は、バイアスが原因となっているケースが多いと言われています」(同)。

資料提要)AiCAN

「冷静にバイアスを調整するバランサーとして、データを参照してもらいたいのです」

手書きの記録やFAX中心の業務に、新人育成も追いつかない深刻な人手不足。そんな状況下で、正確・迅速な情報共有を可能にし、経験不足やバイアスを補うために髙岡氏らが開発したのが、社名と同名のアプリ「AiCAN」だ。クラウド型のプラットフォームで、特徴は
 1)児童の基本情報や経過記録の登録
 2)初任者でも入力しやすい
 3)チャット機能や写真撮影機能
 4)セキュリティの確保された閉域ネットワーク(移動中や訪問先でも入力・閲覧が可能)
 5)AI解析による類似ケースや虐待の再発確率の表示(判断対応をサポート)
帳票出力や電子決裁の機能も備え、同じ内容を何度も入力する必要がなくなる。試験導入した自治体では、情報共有のスピードが既存システムに比べて半分以下になった。ある経験10年目の児童福祉司は、緊急受理会議時にAIの指標の1つである「過去の保護率」を参照することで、所長・課長とも判断の根拠を共有できたそうだ。

「“こうだと思ったけど、データを見ると…あれ、違うかも?”となれば、立ち止まることができる」と髙岡氏。冷静に、見落としがないか振り返ることで、救える命が広がる可能性がある。
「データは診断や判断などの“結論”にはなりません。特に虐待対応のような対人援助の領域では、最終的な判断は、常に人が行います。成功例だけでなく失敗例からも学びながら、改善のサイクルを回していくことが大切です」

株式会社AiCAN

https://www.aican-inc.com/

かながわビジネスオーディション

https://www.b-audition.jp/

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