1. トップ
  2. スタッフブログ
  3. 同一労働同一賃金への準備は進んでいますか?

スタッフブログ

生産性向上・人材活用
掲載日:2020年12月21日

同一労働同一賃金への準備は進んでいますか?

「同一労働同一賃金」が進められています

働き方改革の一環として、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目指す「同一労働同一賃金」が進められています。その根拠法の1つ、パートタイム・有期雇用労働法の中小企業への適用が2021年4月1日に迫っています(派遣労働者については労働者派遣法によりすでに適用)。そこで、今回は同一労働同一賃金の概要と中小企業が行っておきたい準備などについて説明します。

パートタイム・有期雇用労働法の適用の主なポイント

まずは今回のパートタイム・有期雇用労働法の適用の主なポイントを2点示します。

1つ目は、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者間での基本給や賞与などあらゆる待遇についての不合理な待遇差の禁止です。
2つ目は、非正規雇用労働者から正規雇用労働者との待遇差の内容や理由などの説明を求められた際の事業主による説明義務があります。つまり、合理的な理由がない限り正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で待遇差は付けられなくなり、また事業主は待遇差がある場合、その説明責任が生じることとなります。

そこで考えたいのが何をもって“不合理”となるのかです。同法ではその判断基準として、「均衡待遇規定」と「均等待遇規定」の2つを挙げています。
前者ではA:職務内容(業務の内容+責任の程度)、B:職務内容・配置の変更の範囲、C:その他の事業、以上3つの内容を考慮して不合理な待遇差を禁止するもの、また後者では前記AとBが同じ場合は差別的取扱いを禁止するものとしています。

もう少し具体的に見ていきます。

Aの業務内容については、まずは正規雇用労働者と非正規雇用労働者の業務の種類(職種)を比較します(参考:厚生労働省編職業分類の細分表)。次にこれが同じ場合は業務分担表などで個々の業務を分割、整理した上で中核的業務を抽出し、両者の業務を比較して判断します。それでも同じ場合は責任の程度(権限の範囲や成果について求められる役割、緊急対応等)が著しく異ならないかが判断基準となります。

またBの職務内容・配置の変更の範囲については、まずは転勤の有無や見込みを、次にその範囲を比較します。転勤の範囲まで同じ場合は職務内容の変更と配置の変更の有無を、さらにそれらの範囲を比較しての判断となります。ここでは人事異動や昇進などにより職務内容や配置の変更があるか否かで判断されます。

上記のような流れで、合理性が判断されていきますが、厚生労働省では待遇ごとの判断を明確化するため、ガイドライン(指針)を策定しています。また、待遇によっては最高裁判所での判例も出てきており、参考とすることができます。

どのような準備が必要なのか

それでは同一労働同一賃金について、どのような準備が必要なのかを考えていきます。

まずは労働者の雇用形態と待遇の状況の確認が必要です。社内に非正規雇用労働者がいるかいないか。該当労働者がいれば賃金や福利厚生などの待遇に正規雇用労働者との違いがあるかを確認します。
次に待遇に違いがある場合は理由を確認し、違いが働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか、なぜ違いを設けているのか、それぞれの待遇ごとに考え方を整理します。そして、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるようにしておくことが必要となります。もし法違反が疑われる状況が判明したら早期に改善に向けた検討を行い、改善が必要となった場合は労働者の意見も聴取しつつ、改善計画の策定、実行が求められます。

また、準備の中で取り組んでおきたいこととして、1つは非正規雇用労働者の就業規則の整備が挙げられます。正規雇用労働者の就業規則と別のものがあり、これに従い異なる運用がなされていることが“不合理性”を判断する1つの要件になるからです。一方、非正規雇用労働者について正規雇用労働者の就業規則を準用している場合は、正規雇用労働者との待遇の相違を主張することは難しいという見方もあります。

もう1つは最高裁判所の判例がある待遇については、規定の見直しを進めておくことです。例えば扶養手当や住宅手当等の手当、休暇や休職等の福利厚生について、すでに最高裁で結論が出たものについては早急な規定の見直しが必要となります。なお、まだ結論が出ていないものについては見直しを急ぐ必要はないと言えます。あわてて見直したものの、その後見直しの必要がなかった場合、それを元に戻すことは就業規則の不利益変更にもなりかねず、対応が困難になるためです。

働き方改革は生産性を向上するための最良の手段

最後に、同一労働同一賃金を始めとした働き方改革は生産性を向上するための最良の手段とされ、その成果を労働者に分配することにより賃金の上昇や需要の拡大を通じて成長を図る、「成長と分配の好循環」が構築されると考えられています。つまり、同一労働同一賃金、働き方改革は社会問題であるとともに、経済問題でもあります。これらを克服するため、まずは自社にとってどのような形が公平であるのかを第一に、すべての労働者の働きがいや労使の信頼関係の再確認を目指すことが必要と考えられます。

<参考>厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

<参考>厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

情報をシェア
  1. 前の記事
  2. 一覧へ戻る
  3. 次の記事