「サポかな」取材名言 ~交通事故の芽を摘むアプリで、悲しむ人をなくす! ジェネクスト笠原社長(3)
父が関係した事故の鑑定を覆したことが起業のきっかけ。
笠原氏が会計事務所に勤めていた40歳の時、タクシードライバーの父が交通事故の当事者となる。警察の判断は、父の過失割合が100%。免許取消もほのめかされた。しかしドライブレコーダーの映像からは、父に一方的な過失があるようには見えない。警察には、「黒白はっきりしている事故は、ドラレコまで見ない」と突っぱねられた。また当時は動画を証拠として提出できる時代ではなく、弁護士も見つからない。
悔しい思いが原動力となった。笠原氏は映像の分析に着手する。門外漢だったが手探りで最適な分析手法にたどり着き、1コマ1コマを分析。車の位置と速度とを割り出して事故の意見書を作成、公安委員会に提出した。結果、相手側の過失が80%と判断され、父は不起訴処分に。冤罪を晴らすことができたのだった。
特許は大事だが、それより強いのが「ノウハウ」。模倣は非常に困難だ。
ベンチャーのキモとして、1.大手にマネされても自分たちの商売ができる手立てを打っておくこと 2.ノウハウを蓄えておくこと、 の2点を挙げた笠原氏。5つの権利取得済み特許と7つの出願中特許があり、スタートアップの特許戦略に長ける当社だが、「特許を読んでもマネできない部分の蓄積」こそ強みだという。
例えば当社の道路交通法違反判定の判定基準は、警察のガイドラインに即しており、これは長年の交通事故判定事業で培ったノウハウだ。また、GPSの精度が低いスマホでも走行軌跡を補正する技術は、多大な時間とコストをかけて開発してきたが、特許にせずノウハウとして保持している。
(取材後記)
事業展開のスピードは、F1レーシングマシン並みの当社。笠原代表の体からは、盛んに細胞分裂する音が聞こえそうなエネルギーを感じるが、
「ベンチャーは、他から資金が入った時、三途の川を渡ることになる」
とその苛烈な厳しさを口にする。事業を一気に上昇気流に乗せ大企業に先んじるには、相当な資金投入が必要というのは、スタートアップの宿命か。
2年前には倒産の危機にあったと言うが、それを乗り越えるのは、笠原代表曰く「ハートの強さだけ」。ベンチャー企業の創業から10年後の生存率は6.3%。宿命を背負う覚悟のある者だけが生き残れるのか。
ジェネクスト株式会社
かながわビジネスオーディション2021 県知事賞受賞