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掲載日:2020年12月11日

コロナ下の営業【専門員レポート】

コロナ下の営業

国際課 専門員 佐々木

営業スタイルの様変わり

コロナが世間を席巻し始めて早8カ月。収まるどころか欧米は寒い季節を迎えて第3波が到来しています。日本も北日本からその兆しが出始めています。

こんな世の中で一番打撃を被っているビジネスは当初飲食店・ホテル、それに関わる観光旅行業そして輸送業いわゆるサービス業、すなわちお客さまと接する接客業です。そして、製造業も苦戦を強いられており、メーカーの営業も厳しい状況です。

でも、その中で、目しか見えないマスク越し、あるいはフェイスガードを着けての会話、相手の表情の読みにくいオンラインミーティング、オンライン展示会と商談会が花盛りの様相を示してきました。企業訪問がある程度可能となったとはいえ、もう様変わりです。これからの営業はどうしたらよいのだろうと思われている人はたくさんいることと思います。

今回のブログは業界/業種問わず一般的な営業の世界についてまとめてみました。どちらかというと製造業の営業という意識が強いかも知れません。

昔の営業は

ここで昔の営業をちょっと振り返ります。

さて、私事ではありますが、社会人となってからずっと営業畑。そのかたわら商品企画、広告・宣伝にも携わった事がありますが、根っからの“売り売り売り”の世界ばかり歩んできました。

それも国内営業の一番厳しいマーケットと言われる大阪での営業を経験し、その後は海外約70カ国での営業で戦う一方いろんな民族の方々と共存共栄を図ってきました。

そこでは、いわゆる、KKD(勘と経験と度胸)、それに少々の商品知識があれば一人前。さらに業界によっては大声が備わればパーフェクトでした。そして一方、買い手、交渉相手の表情・しぐさ、目の動きの連携(つながり)をしっかりとらえ、読む。口が笑っても、目がどうなっているのかよ~く見極めないと結果的にだまされる。一般的には日本人はなかなか表情に出さない。口元の笑いでごまかす。そして日本語の特長で最後まで何をいっているのかよく分からないと言われました。

ただ、腹芸が得意、いわゆる商売上手と言われている人たちは、アフリカではレバノン人・シリア人、中近東ではアラブ人、欧米ではユダヤ人、アジアを中心として世界の中でも抜きんでているのはインド人、さらに別格なのは“肉を切らせて骨を断つ”という華僑を始めとする中国人たちを相手とすると、時には日本人の特長をうまく使って、真意を相手に読ませない、ただし言うべきところはビシッと主張して引き下がらない。そしてタイミングの頃合いを図って取引先相手の欲しい所を見切って手を握ります。そんな海外営業はさすがに疲れますが、それが営業の醍醐味だったと言えます。

製造業は現場・現物主義

そんな営業の世界は、製造現場に行くと責任者に馬鹿にされました。“何だ、そんな想像の世界は!具体的でない!字ばっかりおどって!”と苦労して作った営業企画書は何回も目の前で否定され、破り捨てられることもありました。そこで学んだのはメーカーでよく言われる“現場・現物主義”と言われる、いわゆる現場・現物を一番大切にしろ!でした。これは企業によって若干違うにしても基本は同じ、営業あるいは日本人の特長でもある、“あうんの呼吸”とか“以心伝心”など糞食らえの世界。確かに日本の職人技とか一芸に秀でる技を伝承するには、目で見て覚えじっくり自分なりに失敗を重ねて長年かけてその師匠の技を会得するというのが、伝統的な伝承のやり方であるのかも知れません。

一方、欧米に追い付け追い越せの時代、いわゆる高度成長期に向かわんとした時の製造現場は、昔からあった物まね+新たに工夫するという独特の新技術開発が展開され、製造の効果効率を求め、コンパクトで高品質なものが世界を制覇していきました。なので、総じて、職人の世界は新技術開発および製造分野も基本は現場と現物重視の世界となりました。それは“もの”を介するからだと思います。

日本人の言語感覚

ここで、営業活動の大前提である、コミュニケーションの根幹である「日本人の言語感覚」について触れます。

「国際会議において有能な議長とはどういうものか?」という問いに対して、「それはインド人を黙らせ、日本人をしゃべらせる者である。」と言われるぐらい、一般的日本人は「沈黙は金なり」の通り寡黙です。かつて、米ロ首脳会談で当時のクリントン大統領がエリツィン大統領に「日本人はイエス・ノーが曖昧なので注意した方がよい」とアドバイスしたとか?外交の場面において、戦後の日本は主張すべきことを主張せず、議論すべきことも曖昧な態度をとって放置してきました。

主張が弱いのは政治家だけに見られる特質なのではなく、これは民族的性格の一つです。日本人の意思表現は欧米の基準からすると非常に淡く、日本では直接的な表現よりも、よりやわらかな言い方が望まれす。共同体意識が強く、その集団から外れることを極度に恐れるというメンタリティが強い日本人からすると、欧米人などの自己主張は時に「強すぎる」「高圧的」のように見えます。日本社会では「控えめ」くらいがちょうどいいとされ、ほぼ単一の民族、言語、風習の中で集団を築いてきた日本では、「言わずともわかる」ことが美徳であり、それが文化的な特徴にもなっています。それに加え、やわらかい態度、しぐさで場を包み込む一方、強い言葉の代わりにもの(現物)でどうですか?と示してきたのが日本人ではなかろうかと言う気がします。

オンラインを使用してのメリットとデメリットは

冒頭でも述べましたが、コロナの状況下、やむを得ずというか必要上、オンラインミーティング、展示会・セミナー・レッスン・商談会そしてECビジネスがごく当たり前になっています。そして、そのほとんどが初めての試みで試行錯誤の段階と言えるでしょう。

オンラインのメリットとデメリットそして課題をについて、一部ですが参考までに取り上げてみましたので、今後のビジネスの方向につながるコミュニケーションのヒントにしていただければと思います。

<オンライン展示会>

メリット(来場者・出展者双方にとって)
  1. 展示会場に行く必要(準備期間、会期、撤収)がないので、人件費や輸送費等のコスト削減。
  2. 会期中に通常業務が可能で、来場者リストはいつでもアクセスし、営業フォローをすることが可能。
  3. リアルの会場では難しい「検索」により知りたい情報ごとに企業ブースを閲覧可能。
デメリット(来場者・出展者双方にとって)
  1. 通常の展示会とは異なるので、フェイスtoフェイスの接客応対で見せる資料とは見せ方の工夫が必要。
  2. データの分析(来場者リストとそのアクセス行動履歴の照合)に関して、不慣れな場合には、少し手間になる。
課題
  1. データ分析の手法は、簡単な分析ができるようにする。
  2. フェイスtoフェイスの接客応対で見せる資料とは違う見せ方の工夫が必要。
  3. 展示品の三次元での見せ方のコストを掛けない工夫

テレワーク・リモート会議・研修会・レッスン

メリット(参加者・主催者の双方にとって)
  1. 通勤あるいは会場への所要時間が削減され、自分の時間が増えたこと。
  2. 定型業務、資料作成などが集中しやすい。
  3. ビデオ・写真含めての総合情報を得ながら実施可能でサポートしやすい。(過去のレッスンを記録に残しやすく、振り返りが容易。)
  4. 複数の場合、一人一人を同時に見ることができてそれぞれをケアできる。
  5. 複数の会議では、普段あんまり発言しない人でも回りの人を気にせず発言できる。
デメリット(参加者・主催者の双方にとって)
  1. 複数人数で意見をすり合わせて何かを決めたりするような作業はやりにくい。
  2. 個人宅にWi-Fi環境がないとリモート会議もできないまた通信料金は自分持ち。
  3. セキュリティは最低限パソコンにはウイルス対策ソフトが導入済であるなど、Windows Updateは最新にすることなどが必要。
  4. 練習およびチェックする方法の伝達、受講者側の理解の程度の把握が難しい。
  5. 特に複数の場合、全員のレベルアップしていくのが困難であり、あくまでも現状維持。
課題
  1. 進捗管理は作業形態によって、効率良くするには企業のクラウドの機能を利用したシステム構築が必要。
  2. 完璧なセキュリティ管理は困難かも知れないが、サーバにあるデータを取得する接続方法などの環境整備などをどうするか。
  3. 情報伝達が一方通行になりがちなのでこれをどのように工夫するか。
  4. 1時間半以上になると、相手の情報が平面な顔の部分だけで、それも視線がこちらの目線と一致しない場合が多く、表情とかしぐさが分かりにくく、目に入る情報が限られて目だけでなく脳(脳科学者曰く)が疲れる。

ポストコロナの営業

ではコロナは収束後、こらからの営業はどうなるのだろう?という最初の疑問に立ち戻ると、キーワードは「オンラインイベント/ECビジネス」「人的ネットワーク」「現場・現物主義」「日本人的コミュニケーション」と考えますので順を追って挙げてみます。

現状ではコロナ下で立ち行かなくなった企業がまだまだ増えそうであるが、一方組織や業績を改善させるチャンスにし始めている企業もあります。

  1. その代表的なのは、オンラインイベント/ECビジネス(地方で量がまとまらない商材をECサイトでまとめ上げて全国に発信する、エキスパートを派遣しないでリモートで助言するシステムを構築する等々、非対面の時代に合った営業のアイデアを駆使したビジネスがどんどん生まれている。これらの手法が営業およびPRの方向を新しく変えていく潮流となるのは確実です。
  2. そして重要なのは、前述のオンライン 展示会、商談会そしてセミナー含めて、どんどん新しい情報が行きかい、手法が進化して行くのは確実ですが、欲しい情報は何か、しっかり的を絞る。そしてその収集方法と発信された情報の本質を分析するには、幅広い人的ネットワークが必要となるでしょう。そのような意味でもいろんな分野の専門家の人的ネットワークを持つことをお勧めします。このネットワークを駆使して、情報の波に振り回されず制御・管理していけるのが“できる営業”という気がします。
  3. そして、何といっても日本のものづくりの大もとは現場・現物主義であると言っても過言ではないでしょう。ポストコロナでもスピード、効率性、安全性をさらに追及してオンライン/ECビジネスがビジネス手法の新潮流にはなるのでしょう。でも、ビジネスの多くは物(サービス)を媒体としての取引きは依然続くわけで、特に海外とのビジネスでは、例えそれがバーチャルであっても物を目の前にする、あるいは物を示す必要性は依然残ると思われます。そのような意味で売買の最終決断はいかに取引先相手を日本製品の技術・高品質・管理豊かな組織力に裏付けされた現場・現物主義という土俵にのせるかで、確実度が高まるのではないかと思います。
  4. そして、決め手は真面目さ、勤勉さに裏付けされた日本人的コミュニケーションであり、それは相手の目、態度、しぐさをじっくり観て、その本音・言っている事の本質を見抜いたうえで、しゃべり過ぎず、相手に言わせ相手の懐に飛び込む。ただし厳しい交渉段階ではきっちり主張して譲らない芯の強さ、粘り強さが力を発揮、最終的に価格以外の要素で相手を説得できて初めて、信頼をベースとした継続可能なビジネス関係を築くことができると思います。
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