現場の方たちの声を聞きます。日々工場で、困りごとについて声を掛けてもらいやすいように心がけています。「ここは紙→デジタルに置き換えよう」など、社員のみんなが改善を考えながら仕事に向かってくれています。

ボトムアップで導入したのが、工作機械みまもりサービス「フリックケア」だ。製造部門には1人1台スマートフォンを支給、プレス機と金型に貼られたQRコードを読み取り、終了時にはスマホで実績を入力する。データはGoogleスプレッドシートに飛んで、誰もが生産状況をリアルタイムで共有できる仕組みを作り上げた。まさに現場で膝を突き合わせて練り上げた仕組み。「IoT化に向けて改善案はありませんか？と会議で尋ねて意見が出てくるものではありませんから」

3年前、IoT化に着手した頃の現場は、記録記入や同じ情報をいろいろな書式やExcel表に転記する作業に相当時間が取られていたり、生産実績の集計が1日単位だったので、計画の変更が生じれば工程にかく乱が起こっていました。また材料の入荷がリアルタイムに分からないため手待ちが発生していました。

大きな投資は難しいが、「困っているところから着手しよう」と始めたところ、スマホ、QRコード、市販のセンサーなど「ありもの」を自由に組みあわせられるアプリにたどり着いた（坂本悟社長曰く「レゴブロックのように」）。導入により、余計な作業が減ったばかりか、これまで口頭や付箋で伝えていたことも全員に、リアルタイムで共有でき、担当者が不在でも問題なく回る組織になった。

プレス機に貼り付けたQRコードをスマホで読み取る

見学に来られる方たちは、私どものような小さい会社がシステムを導入してうまくいっている理由を知りたいとおっしゃいます。どこから始めたらいいのか、費用が掛かるのでは、と。

生産報告と生産管理の時間を激減させたアプリ＋スプレッドシート。導入時の費用は無し、月々のランニングもスマホ1台20,000円程度だ。なにより小さく始めて大きく育ってきたシステムは、実務に即したフレキシブルさを持っている。「トップが導入を決めたけど、使いづらいな、でもしょうがないな、というのは良くないですものね」。

これまでの作業フローや帳票を変えずにシステムを導入し、「IoTって便利だな」「使えるな」って社員の皆さんに実感してもらえたんだと思います。

IoTで案外簡単に、安くできると全員が希望を持った結果、これまで「不便だけど…」と諦めていたことも、現場でどんどん坂本専務に声が掛かるようになったという。