海外進出
掲載日:2023年9月25日
KIP国際化支援専門員コラム Vol.3 「ビッグマック指数(The Big Mac index)について」
KIP国際化支援専門員コラム Vol.3
「ビッグマック指数(The Big Mac index)について」
国際化支援専門員コラムは、さまざまなテーマで不定期に掲載していきますので、お楽しみください。
今回は、「ビッグマック指数(The Big Mac index)について」をお届けします。
はじめに
国際化支援専門員の小島です。
先日、英国の経済専門誌「エコノミスト(The Economist)」が2023年7月時点の「ビッグマック指数(The Big Mac index)」を発表しました。それによると、日本は450円で、アメリカは778円、アメリカは日本の約1.7倍です。
「ビッグマック指数(The Big Mac index)」は購買力平価の比較だとか、為替の差を表しているとか言われているが、何となく、世界中同じものであるビッグマックで比較しているから正しいのだろうと思い込んでいるのではないか?と考え、「ビッグマック指数(The Big Mac index)」についてまとめてみました。
1.概要
- ビッグマック指数(The Big Mac index)とは?
ウィキペディア(Wikipedia)によると、イギリスの経済専門誌『エコノミスト』によって1986年9月に考案されて以来、同誌で毎年報告されている。
ビッグマックはほぼ全世界でほぼ同一品質(実際には各国で多少異なる)のものが販売され、原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金など、さまざまな要因を元に単価が決定されるため、総合的な購買力の比較に使いやすかった。これが基準となった主な理由とされる。 - 具体的には、たとえば日本でビッグマックが250円、アメリカで2ドルのときは、250/2=125となり、1ドル=125円 がビッグマック指数となる。もしこの時点で、為替レートが1ドル110円だとすると、為替相場はビッグマック指数に比べて円高であり、この後、125円に向けて円安が進むだろう、などと推理する。
2.実際の数値
アメリカを100%として、それに対してどれだけ高いのか、安いのかを表している。最も高いのがスイスで114%。以下、欧米の国が上位を占め、22位である。つまり、日本の為替は安すぎる、または、物価が安すぎるということになる。
<2023年7月時点の「ビッグマック指数(The Big Mac index)」>
(引用先:Webサイト「おさんぽみち」https://www.osanpomiti.com/ )
3.比較に於ける問題
- ビッグマックは、世界中同じものを提供している。従って、購買力評価や実際の為替を測る物差しになるという解釈だが、本当にそうだろうか?
- 実際は国によって、ビッグマックは異なった重量、栄養価、サイズで提供されているようだ。例えばオーストラリアのビッグマックはカナダ版に比べカロリーが22%少なく、メキシコ版に比べ重量が8%軽くなっているという記事もある。自分の経験でもオランダやロシアのビッグマックは日本のそれよりはるかに大きかった。
- ヒンドゥー教のインドでは牛肉ハンバーガーが売れないので、「マハラジャバーガー」という鶏肉のハンバーガーが売られている。私もインド出張中に食べたが、ビッグマックはメニューになかった。しかインドマハラジャバーガー」をビッグマックとして比較している。
- フィリピン(ジョリービー)や韓国(ロッテリア)など、ローカルのハンバーガーチェーン店が強い所は競争条件から、実際より安めに販売しているのではないだろうか?日本でも他のファストフードとの競争条件で価格が決まる場合もある。例えば、吉野家の牛丼、立ち食いソバ等との競争条件が価格に影響する。
- アメリカを初め、香港、シンガポール、日本などではマクドナルドは定着しているが、ベトナムには22店舗しかなく、これはベトナム国民562万人につき1店舗しかない事になる。ベトナムでは、屋台のサンドイッチ(バインミー)に比べてビッグマックは4倍程度の価格で、ビッグマック=高級品という感覚もある。
- 原材料の牛肉や小麦に対する補助金制度といった各国独自の特殊な事情も影響する。
(一部データ引用:Webサイト「おさんぽみち」https://www.osanpomiti.com/ )
4.ビッグマックから日本の経済を俯瞰する
- 以上のように「ビッグマック指数(The Big Mac index)」というものは、かなり怪しい指数であることが分かって来たが、ある期間を時系列に比較すると、ビッグマックの価格の変化から日本の経済が長期に渡って停滞していることが分かる。
- アメリカのビッグマックの価格は2000年来、年々上がっていることが分かる。日本のビッグマック価格は1991年のバブル崩壊後に値を下げて、2012年のアベノミクス以降に価格が戻ってきたが、ほぼ横ばいである。(引用先:ファイナンシャルフィールド)
- 以下のグラフは、日本とアメリカの30年間の国内総生産(GDP)の推移である。ビッグマック価格と同様に、アメリカのGDPは右肩上がりだが、日本ではほぼ横ばいである。
- 「ビッグマック指数」は、通貨の割安感や割高感を比較するものだが、経済成長しているアメリカと経済成長していない日本を比較すると、経済成長が価格に影響する=インフレが進行していくということが見えて来る。(引用先:ファイナンシャルフィールド)
- 30年に渡るアメリカと日本の経済成長の差が積み重なって、2020年では、アメリカのGDPが日本の4倍になってしまった。その一方で、アメリカでインフレが進行したといっても、アメリカのビッグマックの価格は日本の1.7倍である。米国の経済成長(GDPの推移)とインフレ(ビッグマックの価格の推移)の関係を日本のそれらと比較すると、この30年の間にアメリカ人は日本人の2.3倍の経済メリットを享受するレベルになってしまったと言えるのではないだろうか?
- やはり、適切なインフレ目標を持ち、経済を拡大させる政策がなければ、益々、日本の窮乏化が進むのではないかと危惧されてならない。
以上
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