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スタッフブログ

サポかな
掲載日:2021年6月 3日

「サポかな」取材名言 菊英 後藤英彦代表~日本で唯一の本ばれん工房(2)

摺師は一つの作品仕上げるのに数種類のばれんを使い分けます。髪の毛のような繊細な表現には極細の芯を、闇夜の黒など、広い面を均一に刷り上げるには、16コという縒り方の効きのいい芯を使う

絵を描くとき、何種類かの絵筆を使い分けるように、ばれんも使い分けるという。ばれん芯というのは、甘皮という柔らかい部分を取り除いた竹皮材料を、細く裂き、それを縒り合わせ、太くし、螺旋状に巻いた芯のことである。それを、ばれん内部に仕込んである。竹皮を何mmに裂くかで、ばれん芯の直径が変わる。

本ばれんを仕上げるには最低8ヶ月以上かかります。ばれんの素材として、新素材などを常に試してはいます。江戸時代と同じ材料と製法の本ばれんは、版木表面の繊細な感覚を摺師の手で感じ取らないといけません。ばれんは摺師の大事な目となるのです

代用ばれんや、ばれん関連用具の企画・開発も行う後藤氏だが、江戸時代から摺師たちにより口伝で受け継がれてきた材料や製法の「本ばれん」には、現代でもかなわないと言う。材料は、福岡県八女市星野村一帯にしか生育しない皮白竹(かしろだけ)を使う。その他、大福帳に使われた和紙、本ワラビ粉や柿渋、本漆など。「ばれん芯」の皮白竹は、梅雨の時期に落ちる。貴重な梅雨の晴れ間に落ちた竹皮を拾い、乾燥し選別する。1枚の竹皮のうち、厚さの均等な、下から20cm、左右と中心部を取り除き、さらに甘皮を剥いで使う。この竹皮を細く裂き、撚り合わせ、縄を作り、ばれん芯にする。本ばれんの価格は、用途により、10~15万円位だが、編み直しができるため、親方から弟子へと、2代、3代と伝えられるほど、耐久性にも優れた道具なのである。

八女市星野村から届いた皮白竹

「本ばれん」に40年以上向き合いながらも、「まだまだ先は見えない」という後藤氏。実年齢は60代後半だが、お話を伺っていて、江戸時代からの先人たちの最年少弟子というか、ひたむきで瑞々しくて感動してしまった。工房には漆を重ねる過程にある本ばれんが並んでいたが、その3割は海外からの注文だという。石油製品を使わず天然のものだけで作る日本式木版画に、遠くの国から熱い視線が注がれている。

ばれん工房 菊英

http://www.scn-net.ne.jp/~kikuhide/

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