事業承継に必要な税務の基礎知識について解説します(第1回 贈与 )
相続や贈与の理解には税務の知識が必要となりますが、特に贈与税に関する重要なポイントのみに絞って5回シリーズで解説します。第1回は、「贈与」について解説します。
なお、「贈与」については、「事業承継に必要な法務の基礎知識について解説します(最終回 贈与)」でもご説明いたしましたが、次のポイントに絞って改めて解説いたします。
贈与の内容
贈与とは
「贈与」とは、民法上、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与えるという意思を表示し、相手方がこれを受諾することによって成立する契約をいいます。
贈与契約とは
贈与契約とは、贈与者の財産を無償で相手方に与える意思を示し、受贈者がそれを受諾することによって成り立つ片務契約、諾成契約です。
贈与は、書面によるものと書面によらないものとがあります。書面による贈与は、これを解除することができないのに対し、書面によらない贈与は、既に履行した部分を除き、いつでも解除することができます。
贈与の特殊形態
贈与の形態には、契約と同時に目的物の引渡しが行われる一般贈与(単純贈与)のほかに、次のような特殊な贈与があります。
贈与の形態 | 内容 |
---|---|
定期贈与 | 定期給付を目的とする贈与(例えば、毎月一定額を贈与する。) |
負担付贈与 | 贈与を受けた者に一定の給付をなすべき義務を負わせる贈与(例えば、評価額4億円の土地を贈与する代わりに借入金2億円を負担させる場合など。) |
死因贈与 | 贈与者の死亡により効力を生ずる贈与(相続税の課税対象となります。) |
財産の名義変更等と贈与
贈与は、通常、親族その他特殊関係がある者相互間において行われることが多く、しかも大部分が書面によらないで行われるので、財産の名義変更が行われた場合であっても、贈与に該当するか否かの判断は困難です。
しかし、財産の名義変更は、新たにその所有権を取得した者が第三者に対し、所有権を主張するために行われる場合がほとんどであり、一般的に名義人が所有権者と推定されています。
このようなことから、不動産や株式等の名義変更が行われた場合において、対価の授受が行われていないときまたは他人名義で新たに不動産や株式等を取得したときには、原則として、それらの財産は、その名義人となった者が贈与を受けたものとして取り扱われます。
ただし、これらの行為が贈与の意思に基づくものではなく、他のやむを得ない理由に基づいて行われたことが明らかな場合には、その財産について贈与税が課税される前に、その財産の名義を実際の所有者の名義にしたときに限り、贈与がなかったものとして取り扱われます。
贈与の時期
贈与税は、贈与により取得した財産に対して課税されますが、贈与の時期がいつであるかということは、納税義務の成立の時期、その財産の評価の時期、申告期限などに関連して重要な問題となります。
贈与の時期 | |
---|---|
① | 書面による贈与については、その贈与契約の効力が発生した時 |
② | 書面によらない贈与については、その贈与の履行があった時 |
③ | 停止条件付の贈与については、その条件が成就した時 |
④ | 農地または採草放牧地の贈与については、上記①から③までにかかわらず、農地法の規定による農業委員会または都道府県知事の許可のあった日または届出の効力の生じた日(ただし、その許可に停止条件が付されている場合など、許可のあった日または届出の効力が生じた日後に贈与があったと認められるものを除く。) |
贈与の時期がいつであるかは、所有権などの移転の登記または登録の目的となる財産についても上記と同様に判定しますが、その贈与の日が明確でないものについては、特に反証のない限りその登記または登録があった時に贈与があったものとして取り扱われます。
「税務大学校 講本」(国税庁)を加工して作成
次回は、贈与税の課税財産について解説します。
このブログ記事の詳細は、専門知識が必要となることも多いため、弁護士、税理士などの外部専門家へご確認されることをお勧めします。
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