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事業承継
掲載日:2023年11月 6日

事業承継に必要な法務の基礎知識について解説します(第7回 遺留分)

事業承継に必要な法務の基礎知識について解説します(第7回 遺留分)

相続や贈与の理解には民法の知識が必要となりますが、特に重要なポイントのみに絞って8回シリーズで解説します。第7回は、「遺留分」について解説します。

遺留分制度

元来、被相続人は、死後においても自由に自己の財産を処分する権利がありますが、民法ではこのような意思を尊重する制度として遺贈や相続分の指定を認めています。
しかしながら、そもそも相続は遺族の生活保障も十分に考慮されたものでなければなりませんので、こうした意味から相続財産の一定割合を一定の範囲の相続人に留保するという制度を民法は設けています。これが遺留分制度です。

遺留分権利者と遺留分の割合

遺留分制度は、相続人のうち一定の者には必ず一定の割合の相続分を確保できる制度ですが、この割合を「遺留分」といい、遺留分を有する相続人を「遺留分権利者」といいます。民法では、遺留分権利者および遺留分を次のとおり定めています。

遺留分権利者 遺留分の割合
相続人が直系尊属(父母など)のみ 遺留分算定の基礎となる財産の1/3
上記以外(配偶者や子供など) 遺留分算定の基礎となる財産の1/2

なお、兄弟姉妹には遺留分権がありません。したがって、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合に、「配偶者に全ての財産を遺贈する」旨の遺言があったときには、全ての財産を配偶者が取得することになります。

(注)総体的遺留分と個別的遺留分
民法で規定されている遺留分は、遺留分権利者の全員に帰属する相続財産全体に対する割合(総体的遺留分)であり、遺留分権利者が複数いる場合には、各遺留分権利者の遺留分は、総体的遺留分が法定相続分の割合にしたがって配分され、算定され、これを個別的遺留分といいます。
したがって、配偶者と子供2人が相続人である場合には、総体的遺留分は1/2、配偶者の個別的遺留分は1/4(1/2×1/2)、それぞれの子供は1/8(1/2×1/2×1/2)が個別的遺留分となります。

遺留分の算定の基礎となる財産の価額

遺留分の算定の基礎となる財産の価額は次のとおりとなります。

遺留分の算定の基礎となる財産の価額=相続開始時の財産の価額(遺贈を含む)+被相続人が生前に贈与した財産の価額+特別受益額-相続債務

(注1)「被相続人が生前に贈与した価額」に算入される贈与の範囲は、相続開始前の1年間にしたものに限ります。ただし、1年以上前の贈与でも、契約当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知って行ったものは算入されます。
(注2)相続人に対する贈与で、かつ、婚姻若しくは養子縁組のためまたは生計の資本としてなされたものは、相続開始前の10年間にされた贈与が算入されます。

遺留分の額の算定

遺留分の額は、次のとおり算定します。

各人の遺留分の額=遺留分算定の基礎となる財産の価額×個別的遺留分の割合

なお、被相続人の財産が新たに発見されたり、相続の放棄があって相続分が変わったりした場合などには、遺留分額の算定をし直すことになります。
(注) 具体的な遺留分の侵害額
相続開始時の財産の価額に1年前までの生前贈与の価額を加え、これから債務額を控除したものに遺留分を主張する者の個別的遺留分を乗じ、その額からその者が受けた生前贈与・遺贈の額を控除し、さらにその者が得た相続額(相続債務額を差し引いた正味の相続額)を控除したものが具体的な遺留分侵害額となります。

遺留分侵害額の請求

遺留分権利者およびその承継人は、受遺者または受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。

「税大講本」国税庁 (nta.go.jp)を加工して作成

次回(最終回)は、「贈与」について解説します。

このブログ記事の詳細は、専門知識が必要となることも多いため、弁護士、税理士などの外部専門家へご確認されることをお勧めします。

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