事業承継に必要な法務の基礎知識について解説します(第4回 遺産の分割)
相続や贈与の理解には民法の知識が必要となりますが、特に重要なポイントのみに絞って8回シリーズで解説します。第4回は、「遺産の分割」について解説します。
遺産の分割
相続が開始すると被相続人の財産は、ひとまず相続人全員の共有財産(この共有財産の持分が相続分である。)となり、その後、相続人全員が具体的にその財産を各人ごとに分けることになりますが、これを遺産の分割といいます。
(1)遺産分割の基準
遺産分割は、民法では、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行うとされています。
また、相続人間の合意があれば、法定相続分や指定相続分と異なった分割を行うことができます。
(2)遺産分割の実行
被相続人が遺言で遺産の分割を禁じた場合を除き、共同相続人はいつでも遺産の分割をすることができるとされています。
指定分割 | 被相続人が、遺言で分割方法を定め、または分割方法を定めることを第三者に委託することをいいます。 |
---|---|
協議分割 | 相続人全員の協議によって分割を行うことをいいます。 |
審判分割 | 調停が不成立に終わった場合、家庭裁判所の審判によって遺産分割が行われます。これを審判分割といいます。また、協議が整わないからといって、いきなり家庭裁判所の審判に付するのではなく、まず調停に付することが求められており、この調停により分割する方法を調停分割といいます。 |
分割の内容とその方法
分割の方法 | 分割の内容 |
---|---|
現物分割 | 遺産を現物のまま分割する方法で、分割の原則的な方法 |
代償分割 | 共同相続人又は包括受遺者のうちの一人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務を負担する(注)分割の方法 |
換価分割 | 共同相続人又は包括受遺者のうちの一人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部を金銭に換価し、その換価代金を分割する方法 |
(注)「代償分割」における「債務を負担する」とは、具体的には例えば相続人固有の財産である預金を取り崩して代償金として現金を交付したり、借入金により代償金を支払ったりする行為をいいます。
遺産分割協議書
相続人間(受遺者を含む。)で遺産分割が成立した場合、それらの意思を確認するために「遺産分割協議書」を作成します。
相続人全員の合意に基づいて作成し、署名かつ実印で押印した遺産分割協議書は、相続を証明する書面であることから、不動産の登記(相続登記)や動産の名義書換手続(たとえば、預貯金の名義変更)などに必要となります。
遺産分割協議書の書式は特に決まっているわけではありませんが、参考のために一つ記載例を示せば、次のとおりです。
遺産分割の効力
遺産の分割は、民法では、相続開始の時に遡ってその効力を生じ、第三者の権利を害することはできないとされています。
また、遺産分割が瑕疵なく成立すると、原則として、相続人全員の合意がなければやり直すことはできないとされています(合意なくしてやり直しができるのは、当初の遺産分割に瑕疵があって協議そのものが無効である場合などに限られています。)。
「税大講本」「相続税の申告書の記載例」国税庁 (nta.go.jp)を加工して作成
次回(第5回)は、「相続の承認と放棄」について解説します。
このブログ記事の詳細は、弁護士、税理士などの外部専門家へご確認されることをお勧めします。
ひとつでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください!
- 親族への計画的な事業引継をしたい!
- 従業員に後継者として会社を任せたい!
- 後継者候補を探してほしい!
- 他の企業に会社(事業)を売却したい!
- 他の企業(事業)を買収したい!
- 当事者同士では承継の合意はできているが不安!
神奈川県事業承継・引継ぎ支援センターの特徴
神奈川県事業承継・引継ぎ支援センターは、「産業競争力強化法」に基づき、公益財団法人神奈川産業振興センターが経済産業省関東経済産業局から委託を受けて実施している国の事業です。安心してご相談いただけます。
相談はすべて無料です。お気軽にご相談いただけます。
中小企業のM&A・事業承継に詳しい専門家が、秘密厳守でご相談を承ります。
神奈川県事業承継・引継ぎ支援センター(外部専用サイト) |
相談のお申し込みは
相談予約申込書のダウンロード 事業承継・引継ぎ支援-相談予約申込書
インターネット相談予約 インターネット相談予約