【リポート】ゼロコロナからウィズコロナへ、急転換する中国 ~大連から見る現地の様子と人々の声~
中国のゼロコロナ政策解禁の流れ
中国では、新型コロナウイルスの感染対策が新たな局面に入りました。「オミクロン株は従来株やデルタ株などと比べ、病原性や毒性が低い」という前提のもと、従来のゼロコロナ政策は事実上終了し、ウィズコロナへとすさまじい勢いで舵を切っています。
この急速な方向転換は、中国で生活する人々に約3年ぶりの自由を与えることになったと同時に、爆発的なコロナウイルスの感染拡大をもたらしています。これまでの変化を、大連市の状況を中心にお伝えしたいと思います。
<ウィズコロナとなり変わった防疫措置(~12月27日時点)>
徐々に始まった各地での防疫措置の緩和は、12月7日に中国国務院共同防疫メカニズム(中央政府)が発出した新たな通知を受けて、一気に進みました。大連市においては、市政府による通達が順次発出され、次のような変化がありました。
・市民が公共施設に入場する際や、地下鉄やバスなど公共交通機関を利用する際、PCR検査陰性証明の確認は行わない。市内一斉の強制PCR検査も行わない。
・感染者は原則自宅療養とする。
・市民は薬局やオンラインのショッピングサイトで解熱剤や抗ウイルス剤などの薬剤を購入する際、PCR検査陰性証明の確認や実名登録は不要とする。
・確定感染者・無症状感染者数の公表を廃止する。
市政府広報(大連発布)も、これまでは感染者数や感染リスク地域の変化など、ゼロコロナを堅持するための情報を発信していましたが、現在は、「感染した際の行動ガイドライン」や「感染に関するQ&A」「コロナの症状に応じた薬剤情報」など、感染を前提とした内容が多く発信されています。
12月13日には行動履歴を確認するWeChatミニプログラム「通信行程卡」の運用も終了し、中国国内の移動も原則自由となりました。2023年1月8日からは海外から中国に入境する際の隔離措置もなくなり、自由な往来の復活まであとわずか、というところまで来ています。
感染状況と市内の様子
こうした防疫措置の緩和の裏側で、12月上旬から中国各地では感染者が激増しています。感染者数の把握がされていないため、正式な感染者数はわかりませんが、地域によって感染のスピードや感染拡大のピークとなる時期、感染するオミクロン株の種類も異なっているようです。
大連市の感染拡大は他地域と比べて比較的早く、12月中旬にはすごい勢いで広がりました。感覚的ですが、既に7~8割以上の方は感染したのではないかと思います。中国ではこれまでのゼロコロナ政策の影響で免疫を持っている人が少なく、また中国製のワクチンを接種している人がほとんどであるなど、日本とは状況が大きく異なりますが、それでもこれほどまでにすごい勢いで感染が広がったことは本当に驚きです。
症状の多くは1週間程度の間、39度の発熱、頭痛、喉の痛みなどで、回復後も痰が出る咳や味覚障害などにしつこく悩まされる方もいます。
感染すると大変辛い状況となりますが、現地では、「もう感染するのはしょうがない、早く罹って終わらせよう」という考えの人が多いように感じます。実際、感染後に陰性となり通常の生活に戻っている人も多く、12月19日(月)の週と比べると26日(月)の週の方が街の人々や企業の活動が正常化しているようです。複数回感染するリスクは否定できませんが、市民全体で集団免疫を獲得するため奮闘している、といった状況が見てとれます。
日系企業の声
日系企業の方々に話を聞いたところ、どの企業も一定数の感染者は出ているものの、交代勤務や在宅勤務、業務の選択と集中などにより、可能な限り事業活動を継続しているようです。感染者割合が多い企業では人繰りに大きな困難があり、また業務に復員する際に使う抗原検査キットの入手が手に入らないなどの課題があるようですが、それぞれの企業で何とか乗り越えているようです。
最後に
大連では既に感染のピークを越えたような印象ですが、中国全体ではまだまだ感染者が増えている地域も多く、また高齢者や基礎疾患のある方が重篤化し医療が逼迫するなど懸念もあります。待ちに待った中国のコロナ政策の緩和を喜びつつも、目の前の感染拡大や急激な政策転換に心が追いついておらず、これまでの厳格なゼロコロナ政策は何だったのだろう…と思っている日系企業の方も多いと思います。
ですが、約3年間も続いたゼロコロナ政策は終わり、2023年の中国は確実に新しいステージに移ります。これまで止まっていた日中間の往来や経済活動も、一気に動き出すことが想定されます。神奈川県としても2023年は遼寧省との友好提携40周年という節目の年となりますので、当事務所では、このタイミングを逃さず、県内企業の皆様とともに、中国とのビジネス交流に積極的に取り組んでいきたいと思います。