減らす株式会社鈴廣蒲鉾本店

徹底的なエネルギーの利用と省エネルギー化で進める脱炭素

1865年創業の老舗企業(ホームページより引用)

【事業者情報】

  • 企業名:株式会社鈴廣蒲鉾本店
  • 所在地:神奈川県小田原市風祭245番地
  • 事業内容:水産食料品(かまぼこ他)の製造販売
  • 創立:1951年(創業慶応元年1865年)
  • 企業HP:https://www.kamaboko.com/

株式会社鈴廣蒲鉾本店は、創業から150年以上、全国的にも名前が知られている有名企業でありながら、「老舗にあって、老舗にあらず」を社是として、現状に満足することなく、常に新しいことに挑戦し続けています。株式会社鈴廣蒲鉾本店の脱炭素・省エネルギーの取り組みについて、経営管理チーム・総務部次長の廣石 仁志様にお話を伺いました。

脱炭素に取り組むようになったきっかけは何でしたか?

かつて小田原は日本一のブリの漁場で、御幸が浜にはサーカスが興行できるほど砂浜が広がっていました。ところが酒匂川にダムや取水堰がつくられた結果、砂浜は減り、ブリの漁獲高もほとんどなくなりました。森・川・海の自然の循環が途絶え、多様な生態系が失われてしまったのです。小田原の自然をこれ以上壊さず、少しでも元の姿を取り戻すために、さまざまな取り組みを進めています。

エネルギー面ではどのような取り組みをされていますか?

東日本大震災を経て、「エネルギーの地産地消化」を進めてきました。レストランや工場など、施設ごとに合った創エネ設備を導入しています。

具体的には、太陽光発電、太陽熱給湯、地中熱換気、コージェネレーションといったシステムです。これらによってエネルギーの地産地消を進めるとともに、消費電力を大幅に削減しています。

レストラン横に設置したマイクロコージェネレーションシステム

取り組みの一つの完成形があると伺いました。

2015年に完成した本社社屋が、一つの理想形になっていると感じています。

雑誌のコピーをきっかけに、「ゼロ円改善」を合言葉に、お金をかけずに省エネに取り組んできました。最初は業者の提案をそのまま受け入れ、必要以上の設備になったこともありましたが、経験を重ねて自社にノウハウが蓄積されるにつれ、自社に適した取り組みがわかるようになりました。

本社社屋の外観

本社社屋では、具体的にどのような省エネ対策をしていますか?

本社社屋では、年間を通して16℃を保つ地下水(伏流水)を空調の熱源に利用しています。冬は加湿、夏は除湿で快適さを保ち、室内を陽圧状態()にしてウイルスやほこり、カビの侵入を防いでいます。

採光にも工夫があり、光ダクトや大きな窓で明るさを確保し、LED照明は採光量に応じて自動調光するシステムを、窓には低放射率の複層ガラスを採用し、壁・床・天井も高断熱化。床材には森林活性を目的に小田原産のヒノキを使うなど、「海を元気にするために山を元気にする」との考えで地元の木材を積極的に使っています。

本社ビルは経済産業省の「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」の承認を受けています。計画段階の削減率55.5%を約10年たった今も維持し、20263月時点で56%の削減を達成。2015年度には「かながわ地球環境賞」を受賞しました。

陽圧状態とは、室内の気圧を外部より高く保つこと。室内の空気が外へ押し出されることで、外部からの微粒子や細菌の侵入を防げます。

光ダクトを通して太陽光を導入

床に設置した空調吹き出し口
床材には小田原産ヒノキを使用

設備はどのように選んでいますか?

風祭店の屋上には太陽熱温水器を設置し、厨房に温水を供給することでエネルギー使用量を年間2122%削減しています。同じ屋上に太陽光パネルを設置し、両者の効率を比較してみました。その結果、単位面積あたりのエネルギー変換量は太陽熱温水器の方が太陽光発電より3.4倍効率的であることがわかりました。ただし、太陽熱温水器はお湯を作るだけですが、太陽光発電は電気として多用途に使えます。用途に応じて最適なエネルギー源を選ぶ重要性がよくわかります。

工場ではどのような取り組みをしていますか?

恵水工場は1995年、酒匂川沿いに移転・竣工しました。原料の受け入れから成形、加熱、包装、出荷まで直線状に効率よく配置され、小田原市内外の小学校から社会科見学も訪れます。

再生可能エネルギーとして太陽光発電と地下水熱を利用しています。特徴的なのは地下水熱の多段階利用(カスケード利用)です。ある工程の熱源として使った(1次利用)後の排水もまだ熱を持っているため、その熱を外気導入の1次処理に再利用します(2次・3次利用)。各工程のエネルギー使用を把握し、こうした再利用を組み合わせることで、より効率的に省エネと脱炭素を進めています。

地下水熱の利用設備と太陽光発電パネル
熱の多段階(カスケード)利用のための配管

工場の省エネは、どの業務から着手されましたか?

工場は会社全体のエネルギーの半分を使うため、重要だと考えていました。原料を冷凍する工程や加熱工程で大きなエネルギーを使う一方、照明は少ないため、まずは製造工程の省エネを優先してきました。

今後はAIによるデータ集約に取り組みたいと考えています。製品1個当たりのエネルギー使用量・金額がわかれば、どの製品・工程の削減が必要か見えてきます。一律に進めるやり方から一歩進んで、削減効果の大きいところに集中して取り組んでいきたいですね。

脱炭素以外に、環境面で取り組んでいることはありますか?

企業理念の「食するとは、生命をいただき、生命をうつしかえること。その一翼を担うのが食品会社の仕事」という考えで、循環型のビジネスにも取り組んでいます。

製造過程で出る魚のアラから肥料を作り、その土で育てた野菜や果実を当社のレストランや製品に使っています。脱炭素と直接結びつくものではありませんが、資源の有効利用や廃棄物の削減につながり、海・里・森・水がすべてつながっていることを実感できます。持続可能な社会を後世に残すことにつながる取り組みです。

これからの展望を教えてください。

模範的に見えるかもしれませんが、実際には社員の反応もさまざまです。省エネ・脱炭素を持続的に進めるため、まずは関心のある人を中心に、身近なところから会社全体で取り組んでいきたいと考えています。もともとお金をかけないところからスタートしているので、他社が参考にできる取り組みも数多くあるはずです。これからも蓄積したノウハウに新しい技術を取り入れながら進めていきます。

かながわ地球環境賞を受賞(平成28年)
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