【連載】加工食品の海外輸出の専門員が語る成功例、失敗例 ーvol.3:酒蔵様の失敗例:自社の強みの困難さに直面-
「加工食品の海外輸出の専門員が語る成功例、失敗例」と題し、全3回のシリーズでお送りいたします。
今回は第3弾です!お楽しみください。
vol.3:酒蔵様の失敗例:自社の強みの困難さに直面
国際課の支援相談員の小杉です。
過去の輸出の成功例や失敗例をなるべく具体的にお話しています。
今回は失敗例から考えられる「準備の大切さ」です。(神奈川県企業さんではありません)
西日本エリアの段々畑が広がる昔懐かしい里山が広がる小さな町にA社の酒蔵がありました。
最初に訪問した時に、社長様に「日本にも酒蔵は数多くあり、差別化をしないと
なかなか輸出商社も扱ってくれません。この酒蔵の強みは何ですか?」
とお尋ねしました。
社長は「待ってました」と言わんばかりに、胸を張って「まず、江戸時代から13代、
300年続く伝統だな。次に、代々このエリアの同業の酒蔵を束ねてきた信用。
3番目は、この(世界遺産に申請予定の)きれいな水と美しい棚田で作られた
お米から作った酒だな。」と言いました。
この社長、欧州のバイヤーとのオンライン商談でも、こんな会社の歴史や自社の優位性を
とうとうと語られたため、商談時間30分のうち25分を使ってしまい、商談不成立となりました。
この社長の対応のどこに問題があると思いますか?
皆さんも自分の会社や商品に愛着やプライドを持つことは大切です。
でも輸出となれば、「販売」であり、買ってくれる方あっての商品であるはずです。
いざ海外に販売となると、どんな点が問題になるのでしょうか?考えてみましょう。
①外国にいる日本人,日系人に売るのか?その外国の現地の方に販売するのか?
現地の方なら現地の方が好まれる味やパッケージ、デザインになっているのか?
②小売店に売るのか?レストランで扱ってもらうのか?加工品で原料として使ってもらうのか?
③原材料や、衛生面の国際認証(ISOやFSSC、HACCP)は必要ないのか?
④ハラル(イスラム系)コーシャ(ユダヤ系)など宗教的な規制、グルテンフリーなどの
アレルギー対応は大丈夫か?
⑤価格は合うのか?日本から海外に出すと少なくても2倍程度の価格になります。
日本の方は「いいものなら、高くても買ってもらえる」と考えていますが、本当にそうか?
⑥念のために、社名や商品名の商標確認は必要ないのか?
⑦その国の現在の食のトレンドにあっているのか?
この辺の基礎的な要素、販売基本方針がある程度ご自分で固めていないとと
価格や販売ルートなどの「販売施策」云々の前に、輸出の土台に乗りません。
今回の教訓。
一度、頭を空っぽにして、「買ってくれる現地の方の立場」に立って考えてみることが
大事なのではないでしょうか?
~お気軽にご相談ください~
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