経営改善の第一歩は「見える化」から

神奈川県の中小企業を支援|早期経営改善計画と経営改善の進め方
神奈川県中小企業活性化協議会は、借入金返済や資金繰りなどの課題を抱える中小企業の経営再建を支援する、法律(産業競争力強化法)により設置された公正中立な機関です。
今回は、前回(9/29)にご紹介した「バリューアップ支援事業」で作成する「早期経営改善計画」をもとに、経営改善の進め方や計画書の書き方のヒントをご紹介します。中小企業庁が公開しているフォーマットを使用するため、初めての方でも安心して取り組めます。
事例紹介:飲食店を想定した経営改善計画
今回のサンプルは、イタリアンレストラン「(株)ヴォーノ」をモデルにしています。飲食業を想定していますが、製造業やサービス業の中小企業でも応用可能な内容になっています。
早期経営改善計画書フォーマット(サンプル)
中小企業庁が提供する計画書のサンプルを、下記リンクからダウンロードできます。経営改善計画の第一歩としてご活用ください。
経営改善計画に盛り込むべきポイント
(1) 自社の基本情報を整理する
会社概要(代表者、株主構成、従業員数、事業所情報など)をまとめることで、事業の輪郭を把握できます。普段棚卸しできていない情報を整理する良い機会です。
(2) 強みと弱みを分析する
㈱ヴォーノの例では、次のように整理されています。
- 強み:OL向けの健康志向メニュー、ファミリー層も楽しめる本格イタリアン
- 弱み:高額な家賃と材料費、接客品質のばらつき、廃棄ロスの発生
このように「できていること」と「改善が必要なこと」を分けると、優先順位が見えやすくなります。
(3) 外部環境を把握する
経営改善計画には、自社だけでなく市場や社会の動向も盛り込みましょう。
- 高齢化の進展
- 健康志向の高まり
- 飲食店の競合増加
外部環境を整理することで、将来の戦略立案がしやすくなります。
(4) 改善方針を具体的に示す
サンプルでは以下の改善策が挙げられています。
- 材料費・人件費の見直し
- 接客マニュアルの標準化
- 試算表を活用した資金繰り管理
「何を」「どのように」改善するかを、数字や仕組みで具体化することが重要です。
経営改善に役立つ指標(数字の目安)
計画書には、財務や経営の指標を取り入れると説得力が増します。特に中小企業が押さえておきたいのは次の4つです。
収益性の指標
- 粗利率:(売上高 - 売上原価) ÷ 売上高 × 100%
- 営業利益率:営業利益 ÷ 売上高 × 100%
効率性の指標
- 在庫回転率:売上原価 ÷ 平均在庫高
- 労働生産性:従業員1人あたりの売上高
安全性(財務安定性)の指標
- 流動比率:流動資産 ÷ 流動負債 × 100%(100%以上が目安)
- 自己資本比率:30%以上で安定
キャッシュフローの指標
- 営業キャッシュフロー:本業で生み出す現金の動き
- 売上と支払・回収の効率を数値で把握
すべてを網羅する必要はなく、業種や課題に合わせて2~3項目を重点的に確認すると効果的です。
まとめ|早期経営改善計画は未来を「見える化」するツール

早期経営改善計画は、自社の未来を可視化するための大切なツールです。
「バリューアップ支援事業」を活用し、専門家と一緒に計画を作成することで、より具体的で実行可能な経営改善計画を策定できます。
- まずはフォーマットで現状を棚卸し
- 自社の強みと弱みを整理
- 外部環境を踏まえて改善策を検討
- 経営指標を活用して立ち位置を確認
このプロセスを踏むことで、金融機関との信頼関係も深まり、資金繰りの安定にもつながります。
「なんとなく経営している」状態から脱却する第一歩として、ぜひ早期経営改善計画の作成を始めてみましょう。
お問い合わせ
詳細は 神奈川県中小企業活性化協議会(経営改善支援担当) までお気軽にお問い合わせください。
【担当】三間(みつま)、小林、市橋