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事業承継
掲載日:2023年10月30日

事業承継に必要な法務の基礎知識について解説します(第6回 遺贈と死因贈与)

相続や贈与の理解には民法の知識が必要となりますが、特に重要なポイントのみに絞って8回シリーズで解説します。第6回は、「遺贈と死因贈与」について解説します。

遺言

(1)遺言の意義

遺言を一言でいうと、被相続人の生前における最終的な意思を、死後に実現させるための制度です。
遺言は、一定の方式に従ってされる相手方のない単独行為で、遺言者の死亡の時から効力が発生するとされています。
遺言を行った者を「遺言者(遺贈者)」、遺言により財産を取得する者を「受遺者」といいます。
また、遺贈者は、自由に受遺者を決められることから、その受遺者は、相続人でもそれ以外の第三者でも、また、個人でも法人でもよいとされています。

(2)遺言の方式

遺言は、民法に規定された方式に従って行わなければならず、その方式に反した遺言(要件を具備していない遺言)は無効となります。
公正証書以外の遺言は、遺言執行の準備手続として、家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません。
遺言の検認とは、遺言書の偽造・変造を防止し、その保存を確実にするために行われる証拠保全手続であり、遺言の内容の真偽、遺言の有効・無効を判断するものではありません。
なお、令和2年7月10日に施行された「法務局における遺言の保管等に関する法律」の適用を受けるものは、検認が不要です。

遺言の方式とその概要

遺言の方式 概要
自筆証書遺言 遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、押印したもの(注1)
公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授するなど一定の要件を備えた公正証書により行ったもの
秘密証書遺言 遺言者が署名押印して封印した遺言書を公証人および証人の前に提出し、遺言者の遺言書であることの証明を受けたもの

(注1)平成30年民法改正により、財産目録等を添付する場合には、その目録については、自書することを要しないこととされました。
また、これらの普通方式のほか、特別方式(注2)として、死亡危急者遺言、船舶遭難者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言があります。
(注2) 特別方式の遺言は、遺言者が普通方式による遺言をすることができるようになった時から6ヶ月生存するときは効力を失います。

(3)遺言の撤回

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができるとされています。
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。
また、遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、破棄した部分については撤回したものとみなされます。

遺贈

(1)遺贈の意義

遺贈とは、遺言者が死後に財産を人(相続人に限らない。)に無償で譲与することです。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈と特定遺贈

包括遺贈 財産の全部または一部を包括的に遺贈するもので、財産に対する一定の割合を示してする遺贈をいいます。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています。つまり、被相続人の権利義務を包括的に承継することから、包括受遺者は、相続財産に対して相続人とともに遺産共有の状態となり、債務も承継し、遺産分割に参加することになります。
※ 厳密には、包括受遺者は、<1>遺留分がない、<2>法人も包括受遺者となる、<3>代襲相続は生じない、<4>相続放棄があったとしても相続分は変化しないといった違いがあります。
特定遺贈 特定の物や権利、あるいは一定額の金銭を与えるというように、財産を特定してする遺贈(割合で示されていない遺贈)をいいます。
受遺者は、その特定された財産を取得することができますが、それ以外の財産を取得するものではなく、また、遺言にない債務を承継することもありません。

(2)遺贈の効果

遺贈は、遺言者の死亡の時(遺言の効力発生の時)から効力を生じるとされています。

(3)遺贈の放棄

受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができるとされ、遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生ずるとされています。
また、遺贈の放棄は撤回することができないとされています。

死因贈与

死因贈与は、贈与者の死亡により効力を生ずる贈与です。
例えば、「私が死んだらあなたに1,000万円贈与する。」といったものです。
死因贈与は、贈与の一種であり契約であるので、法律的には単独行為である遺贈と異なります。
しかしながら、贈与者の死亡を原因として効力が生ずること、財産が無償で受贈者に承継されることなどの点で、遺贈と非常に類似しています。
したがって、民法では死因贈与は遺贈に関する規定を準用するとされています。

「税大講本」国税庁 (nta.go.jp)を加工して作成

次回(7回)は、「遺留分」について解説します。

このブログ記事の詳細は、専門知識が必要となることも多いため、弁護士、税理士などの外部専門家へご確認されることをお勧めします。

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