1. トップ
  2. スタッフブログ
  3. 中小企業の粉飾決算|与信審査における注意点

スタッフブログ

設備投資
掲載日:2025年11月26日

中小企業の粉飾決算|与信審査における注意点

中小企業の粉飾決算|与信審査における注意点

本記事では、与信審査時に見る中小企業の粉飾決算の主な手口(資産・負債・純資産・収益・費用)を整理し、意図せざる粉飾を含め、なぜ粉飾が悪いのかを審査担当者視点で解説します。

与信審査では中小企業の財務状況を確認しますが、意図的でなくても数字が実態より良く見えてしまうケースがあります。そのため、粉飾決算は短期的に見栄えを良くしているように見える点に注意が必要です。

粉飾が悪である理由(要点)

  • 外部ステークホルダー(金融機関、仕入先、投資家)が誤った判断をする:融資や取引継続の是非を誤らせる。
  • 税務・法令リスク:発覚時には追加課税、罰金、場合によっては刑事責任に発展する。
  • 内部管理の崩壊:実態把握ができなくなり、経営判断が誤る。
  • 従業員や取引先への影響:雇用や支払いが不安定になり得る。

5勘定別:中小企業での典型的な粉飾事例(審査担当者視点)

勘定区分 粉飾の狙い 具体的な手口(事例)
(1) 資産 財務体質の良化(自己資本比率向上など)
  • 売掛金の過大計上: 回収見込みのない取引や架空取引を売上・売掛金で計上。
  • 棚卸資産の水増し: 在庫数量を多く報告、または評価法で在庫評価を引き上げ。
  • 固定資産の未償却・除却未処理: 減価償却を繰り延べ、帳簿上の資産を多く見せる。
※審査時は売掛金の回収可能性や棚卸在庫の実地調査を確認する場合があります。
(2) 負債 負債比率を低く見せる
  • 買掛金/未払費用の計上漏れ: 決算日に存在する債務を除外。
  • 借入のオフバランス化: 関連会社・個人名義へ移し、BSに計上しない。
  • 引当金の過小計上: 賞与・退職給付等の将来負担を隠す。
※審査時は未払金や引当金の計上状況の整合性を確認します。
(3) 純資産 資本の健全性を偽装
  • 架空増資の計上: 実際の払込がないのに資本金や資本準備金を増加。
  • 繰越利益の操作: 過年度損失の隠蔽や繰延処理で見かけの剰余金を増やす。
※審査時は資本増減の履歴と払込証明の確認を実施します。
(4) 収益(売上) 売上・利益を増やして好業績を装う
  • 架空売上の計上: 実体のない取引で売上を水増し。
  • 期ずれ(繰上計上): 実現していない売上を当期に前倒し計上。
※審査時は請求書・受注履歴・入金状況との照合を確認します。
(5) 費用 費用を小さくして利益を水増し
  • 経費の繰延資産化: 本来費用である支出を資産として処理し当期費用を圧縮。
  • 減価償却の過少計上: 耐用年数を長期に設定。
  • 外注費・未払計上漏れ: 外注費を翌期扱いにして当期費用を減らす。
※審査時は費用計上の適正性、契約書や請求書との整合性を確認します。

実務的な注意点(発覚しやすい場面)

  • 金融機関の決算資料照会や追加資料要求時に齟齬が出ると発覚しやすい。
  • 税務調査では、領収書・請求書類の整合性や取引先照会で不正が判明することが多い。
  • 連結や第三者監査が入ると、帳簿の整合性が厳しくチェックされます。

まとめ なぜ粉飾は決して許されないのか

粉飾決算は短期的な便益(融資獲得や取引継続)をもたらすように見えますが、長期的には企業価値の毀損、法的制裁、社会的信用の喪失を招きます。 特に中小企業は人的・資本的余力が小さいため、発覚後のダメージが致命的になりやすい点に注意が必要です。 透明で正確な会計処理と内部統制の整備こそ、持続可能な経営の基礎です。

(本記事は一般的な会計解説です。実際の会計処理・開示判断は税理士・公認会計士等の専門家へご相談ください。)

参考文献・出典

情報をシェア
  1. 前の記事
  2. 一覧へ戻る