破産せずに再出発を果たした50年企業の挑戦
神奈川県中小企業活性化協議会は、借入金返済などの課題を抱える中小企業の経営再建に向けた取組みを支援する、法律(産業競争力強化法)により設置された公正中立な機関です。
このたび、当協議会がこれまでに行った支援の一例として、経営環境の変化で厳しい状況に追い込まれながらも、経営者保証ガイドラインとスポンサー支援を活用して再出発を果たした事例をご紹介します。(事例はフィクションです)。
本事例が、経営にお悩みの皆さまにとって、当協議会を気軽にご利用いただくきっかけとなれば幸いです。
会社の概要
神奈川県に本社を置く伊勢佐木精工株式会社は、創業50年以上の歴史を持つ自動車部品加工事業者でした。長年にわたり大手自動車メーカーと協力関係を築き、エンジン部品の精密加工を中心に安定的な成長を実現してきました。ピーク時には海外での事業展開も行い、一時は従業員400名を抱えるまでに拡大しました。
経営悪化の要因
しかし、時代の変化は想像以上に早く進みました。
- EV(電気自動車)の普及により、従来主力であったエンジン部品需要が急減
 - 国内市場の縮小に加え、海外進出での投資失敗(新工場の稼働率低迷)
 - 結果として多額の有利子負債だけが残り、資金繰りが悪化
 
こうして伊勢佐木精工は過剰債務に陥り、経営は行き詰まってしまいました。
再生の道を模索
経営者は「破産」という選択ではなく、事業と雇用を守るための再生の道を模索しました。重要なポイントは、“何が衰退し、どこに成長の芽があるか”を分けて考えたことです。
その結果、選ばれた手法が次の二つでした。
- スポンサー型の第二会社方式
 - 経営者保証ガイドラインの活用(経営者個人の債務整理を含む)
 
※スポンサー型第2会社方式:経営不振に陥った中小企業が、収益性の高い事業を新設の「第2会社」に移し、スポンサー企業からの支援を受けて事業を継続・再生させる方法です。
→ 事業と雇用を守りながら、債務整理と再建を両立できます。
※経営者保証ガイドライン:中小企業の経営者が金融機関と交わす「個人保証」について、契約や履行の際にどう取り扱うかを、中小企業・経営者・金融機関が共通で定めた自主的なルールです。
→ 経営者の過度な負担を軽減し、再出発を後押しする仕組みです。
再生スキームのポイント
- 旧主力(エンジン部品)に依存していた事業構造を整理
 - 数年前から試作・小規模生産で取り組んでいたEV向け精密部品の部門を切り出し、新会社へ承継
 - 業界内の部品メーカーからスポンサー出資を受け、新会社として再スタート
 - 分割対価や遊休不動産の売却で、金融機関へ可能な限り弁済
 - 経営者は保有していた事業用資産を無償譲渡し、残る保証債務はガイドラインに基づき整理
 
こうして旧伊勢佐木精工は特別清算を行い、過剰債務を整理。新会社「新伊勢佐木精工株式会社」はスポンサー支援の下、健全な財務基盤で再スタートを切ることができました。
支援の成果
- 会社は「過剰債務」という重荷を下ろし、将来性ある事業で再生
 - 従業員の約7割の雇用を維持
 - 経営者も「自由財産」と「一定期間の生活費」を確保し、再起のチャンスを得ることができた
 
統括責任者からのひとこと
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この事例はフィクションですが、実際に同じような課題を抱える企業は少なくありません。経営に行き詰まったとき、「破産しかない」と思い込む必要はありません。制度や専門家の支援を活用することで、事業の再生と経営者の再出発を同時に実現する道が開けるのです。
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※本ページの事例はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは関係ありません。