破産以外の中小企業再建の選択肢

経営者保証ガイドラインで再出発する道
経営が厳しくなったとき、「破産しかない」と思い込んでいませんか?
実は、破産以外にも再出発の方法があります。その1つが 「経営者保証ガイドライン(GL)」 の活用です。
神奈川県中小企業活性化協議会では、債権者への誠実な対応を前提に、経営者が再チャレンジできる道を支援しています。
今回は、昭和39年創業の生産用機械部品製造業者の事例をご紹介します。(※フィクションです)
事例:石川産機製造株式会社
- 資本金:1億円
- 従業員数:40名
- 事業内容:生産用機械部品製造
長い歴史を持ち、多くの顧客から信頼を得てきましたが、近年は受注減少や原材料費高騰により赤字が続き、大幅な債務超過に陥りました。
代表取締役 石川町夫氏(58歳) は、会社の存続を目指してスポンサー探索や事業譲渡を検討しましたが、収益改善の見込みが乏しく、最終的に 「任意廃業」 を選択しました。
※任意廃業:裁判所を通さずに会社を整理・清算する方法
会社と経営者に残された課題
- 会社は不動産を保有していたが債務超過
- 経営者は多額の保証債務を抱え、生活再建が課題
経営者保証ガイドラインの活用
会社は 「特別清算」 を申請予定でした。そのため、会社と経営者をまとめて整理する 「一体型GL」 は利用できず、経営者個人の保証債務のみを整理する 「単独型GL」 を活用しました。
※特別清算:会社の債務を整理し法人格を消滅させる手続き
※一体型GL:会社の再生・整理と経営者保証債務整理を一体的に進める手続き
※単独型GL:会社の清算とは切り離し、経営者個人の保証債務整理のみを進める手続き
実際の対応内容
不動産の任意売却
- 市場での早期処分価格を上回る額で売却
- 弁済原資を最大化し、債権者・保証人双方にメリット
経営者の生活再建
- GL活用により自由財産(99万円)+以下の資産を確保
- 一定期間の生活費:33万円×11か月=363万円
- 引越費用(自宅売却後、地方の実家へ移住)
- 会社清算にかかる費用
※生活費は民事執行法施行令で定める標準的世帯の必要生計費
金融機関にとってのメリット
- 破産手続きの場合の回収見込:約2億円
- 任意売却+GL活用の場合の回収見込:約2億8千万円
経済合理性の観点からも効果を発揮
統括責任者からのひとこと
この事例は、
- 企業の任意廃業(特別清算)
- 経営者保証ガイドラインを活用した債務整理
- 「生活費」「引越費用」など生活再建資産の確保
を組み合わせることで、金融機関・経営者双方に納得感のある解決を実現した好例です。
まとめ
経営に行き詰まったとき、選択肢は 「破産」だけではありません。制度を正しく理解し活用することで、債権者の回収と経営者の再出発を両立できる道が拓けます。
私たちは経営者のみなさまの再チャレンジを応援します。相談は無料・秘密厳守。どんな状況でもまずは話してみてください。一緒に次の一歩を考えましょう。