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スタッフブログ

企業再生
掲載日:2025年7月28日

神奈川県中小企業活性化協議会の支援事例をご紹介します

神奈川県中小企業活性化協議会は、借入金返済などの課題を抱える中小企業の経営再建に向けた取組みを支援する、国が設置した公正中立な機関です。
このたび、当協議会がこれまでに行った支援の一例として、法人と経営者個人の債務を一体で整理し、抜本的な再生を実現したケースをご紹介します(※事例はフィクションです)。
本事例が、経営にお悩みの皆さまにとって、当協議会を気軽にご利用いただくきっかけとなれば幸いです。

法人と経営者個人の債務を一体で整理し抜本再生した事例(フィクション)

企業概要

株式会社関内商事は、創業30年を誇る老舗の外食事業者で、主に惣菜製造販売事業と多店舗展開を行っていた。
事業内容は以下の通り

  • 惣菜製造販売(全国に10店舗)
    外食事業(居酒屋を中心に、全20店舗展開)
  • 元々は順調に事業を拡大し、店舗数は20店舗に達し、業界でも有名なブランドを築いた。しかし、外食産業の競争激化と消費者のニーズの変化、さらには新型コロナウイルスの影響で一気に経営が悪化した。企業の総債務額は15億円に達し、経営陣は苦境に立たされていた。

窮境要因

  • 市場の縮小と過剰出店 出退店を繰り返し、急速に多店舗展開を行ったものの、店舗の利益率が低下し、キャッシュフローが悪化。
  • コロナ禍の打撃 2020年3月以降、飲食業界は急激に冷え込み、店舗の休業や営業制限が続き、収益が完全に途絶えた。
  • 負債の膨張 資金繰りの悪化に伴い、銀行からの借入金や取引先からの支払い遅延が重なり、総債務が過大化した。経営陣は、法人・個人合わせて約15億円の負債を抱え、再生の道を模索した。

主な改善策・再生のポイント

経営陣は、法人と経営者個人の債務を一体で整理する方法を選択し、以下の戦略を打ち出した。

  1. スポンサー型第二会社方式の採用 既存事業をスポンサー企業に譲渡し、事業継続と雇用維持を図る。株式会社関内商事の経営陣は新たなスポンサー企業(株式会社桜木町フーズ)との提携を決定。これにより、10店舗の惣菜販売事業がスポンサー企業の傘下で再生することが決まった。
  2. 不採算事業の整理と譲渡 外食事業(20店舗)については、厳しい市況と過剰な店舗数で不採算であったため、店舗を閉店し、利益が見込める事業(惣菜製造販売)のみを譲渡。事業譲渡により得た資金で、債権者への部分的弁済を行う。
  3. 経営者の個人保証整理 代表取締役の関内一郎氏は、会社の債務に対して個人保証をしていた。同氏は、保証人として経営責任を自覚し、スポンサー企業から資金援助を受けた後、個人の保証債務を経営者保証ガイドラインに基づき整理。個人保証債務も一部履行後に免除となり、負担を軽減。
  4. 新しい資本政策と再生計画 事業の一部をスポンサー企業に譲渡し、外部の資本を取り入れて再生計画を策定。事業譲渡後の企業は、負債を圧縮した状態で特別清算を実施し、法的整理を通じて債務を整理。新たな経営陣が立て直しを行う体制が整った。

再生のスキーム

以下のような流れで再生が行われた。

  • 事業譲渡後の惣菜製造販売事業は、スポンサー企業の傘下で再スタート。
  • 個人保証の整理により、経営者の負担が軽減され、個人再生手続きが進められた。

再生の成果

  • 事業存続と雇用維持 スポンサー企業の支援により、惣菜販売事業は再生され、全従業員の雇用が守られた。
  • 法人・個人の債務整理 法人の債務は特別清算を通じて整理され、経営者個人の負担も経営者保証ガイドラインを適用することで保証債務を整理。
  • 新たな事業展開の開始 再生後、スポンサー企業は惣菜事業を拡大し、新たな販路を開拓することで、業績は回復基調に向かった。

結論

株式会社関内商事は、スポンサー型の第二会社方式(※1)と経営者保証ガイドライン(※2)を活用することで、法人・個人両方の債務整理を行い、事業の再生に成功した。再生スキームの導入により、雇用の維持と地域経済の安定に寄与し、破産を回避した企業の再建事例として注目された。

(※1)経営不振の中小企業が、収益性の高い事業を別会社(第二会社)に移管し、旧会社を清算することで事業再生を目指す手法

(※2)中小企業の経営者が個人保証を行う際の契約時や履行時における対応について、中小企業、経営者、金融機関が共通で定めた自主的なルール

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